今日読み終えた本

キングの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

キングの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

一年間図書館にこもって執筆したという、新鋭ジョン・ハートのデビュー作である。
本国アメリカでは発売前後から話題沸騰だったという。
本書は、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」の
’07年度ベスト・ファースト・ノベル(最優秀新人賞)にもノミネートされている。
物語の舞台はノース・カロライナ州ソールズベリー市。主人公で弁護士のジャクソン・ワークマン・ピケンズ、通称“ワーク”は、依頼人との接見に訪れた拘置所で、父エズラの死体が見つかったと知らされる。頭部を2発撃たれており、他殺であるのは明らかだった。辣腕弁護士だった父が行方不明になって18ヶ月。すでにこの世の人ではないだろうと覚悟はしていたが、その知らせにワークは動揺する。ワークは父殺しの犯人は、妹のジーンでしかありえないと思っていたからである。
やがて、父の遺言が明らかになると、警察はワークに疑いの目を向ける。一方でワークの独自の調査によって、次々と意外な事実が明らかになっていく過程はさすがにアメリカン・ミステリーらしく、スリリングである。
しかし本書は、単なる犯人当てのサスペンスではない。ピケンズ一家における親子の確執、ワークと妻との夫婦の問題、ワークが子ども時代から抱えている罪の意識の問題、妹ジーンとその同居人の問題、そして、今は亡きエズラ・ピケンズの重々しい人物像。それらが物語に独特の雰囲気をあたえると同時に、濃密な、読み応えのある作品にしている。