今日読み終えた本

バーニング・ツリー (新潮文庫)

バーニング・ツリー (新潮文庫)

もしある日突然、あなたの最愛の夫が殺人の容疑で逮捕されたらどうしますか?
この物語の主人公クレアは、迷うことなく裁判で弁護士として夫の弁護に立ち上がるのだ。それもそのはず、彼女はハーヴァード・ロウ・スクールの教授でありながら、現役の刑事弁護士としても著名なのである。
実はクレアが知っているトムという夫の姿は偽りであり、彼は本名がロン・キュービックという陸軍特殊部隊<バーニング・ツリー>出身者であった。彼の容疑は’85年6月、エルサルバドルで87人の村民を虐殺し、その後軍隊から脱走したというもので、今回ある偶然から身元がバレて、連邦執行官によって逮捕され、軍事法廷という特殊で、
非公開の裁判の場で裁かれることになったのだ。
クレアは、不慣れな軍事裁判上で、難しい局面に立たされても、最後まで夫を信じて闘うのである。二転三転する軍事法廷シーンはスリリングで読み応えがあるし、あらゆる陰謀の影で揺さぶられようとも、決してひるむことなく夫の無罪を勝ち取るべく戦う
クレアの姿には心を打たれる。
本書は、政治学者の経歴を持つジョゼフ・フィンダーならではの、ディテールにこだわった国際政治・戦争・謀略小説であり、巧みなプロット展開によるサスペンスフルな法廷小説でもある。そしてまた、クレアとトムの夫婦愛の物語であることも忘れてはならない。