今日読み終えた本

ゼロ・アワー (新潮文庫)

ゼロ・アワー (新潮文庫)

本書は、世界金融システムの動脈であるマンハッタンの大銀行群、その生命線とも
いえるコンピューター・センターの破壊を狙う南アの一匹狼のテロリスト、そしてそれと戦うFBI女性捜査官の物語である。
南アの刑務所から、スイス、ベルギー、フランスなどヨーロッパ各国、そしてアメリカのボストン、ワシントン、ニューヨークと、地理的に観てもスケールの大きな話である。
プロットもなかなか壮大で、ストーリーは息詰まるようなスピード感に溢れている。
アメリカ安全保障局によってスイス上空でキャッチされた解読不能の暗号シグナル、<ゼロ>の暗号以外すべて謎に包まれた元南ア情報部員の刑務所脱走、ボストンの一流ホテルでの高級娼婦殺人事件、金融スキャンダルによってアメリカを追放され、復讐に燃える半身不随の大富豪・・・そして、これらいくつもの一見無関係な出来事は物語の中で次第に大きな陰謀の構図となって浮かび上がり、最後にはこのテロリストとFBI女性捜査官との対決によってクライマックスを迎える。
なによりも本書では、ジョゼフ・フィンダーが作品の背景となる舞台と分野に関する
綿密な取材を売り物とする作家であることから、銀行業界の現場におけるコンピューター・システムの実態、人工衛星による通信技術と暗号、指紋照合の技術、爆弾メカニズム、パスポートなどの公文書偽造のテクニックなど、作品中には専門知識がコレでもかコレでもかと披露される。読者は、さながらドキュメンタリーを読んでいるような錯覚を覚えるほどだ。