今日読み終えた本

ラグナ・ヒート (扶桑社ミステリー)

ラグナ・ヒート (扶桑社ミステリー)

本書は、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」
ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)を2度も受賞した(’02年度『サイレント・ジョー』、
’05年度『カリフォルニア・ガール』)T・ジェファーソン・パーカーの’85年のデビュー作である。
デビュー作からはその作家のすべてがうかがえるといわれているが、まさに本書の
主人公、カリフォルニアはラグナ警察署唯一の殺人課刑事、32才のトム・シェパードはのちのパーカーの小説世界に登場する典型的人物のように描かれている。
幼くして母親を殺害され、1年前にはロサンゼルスで16才の黒人少年を射殺したかどでセンセーショナルに扱われ辞職、おまけにその際、離婚まで経験している。精神的なダメージを受けて故郷ラグナに帰ってきて職を得たトム。彼を待っていたのはラグナ
はじまって以来の残虐な連続殺人事件だった。
心にトラウマを抱えながら、続けなければならない孤独な捜査、謎が謎を呼び、過去へ過去へとさかのぼる事件の輪、やがて30年の時を超えて明かされる衝撃の真実、
すべては自分との戦いなのだ。
本書では、ミステリーとしての熟成度もさることながら、決して表面的なエンターテインメントにとどまらず、トムという主人公の内面にも奥深く入り込んだ、パーカーならではの世界が味わえる。これでデビュー作かと思いながら時を忘れて味読した。