今日読み終えた本

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎の14作目に当たる本書は、2年ぶりの書き下ろしで、しかも1000枚、
単行本にして501ページにも及ぶ久しぶりの、しかも過去最長の大長編である。
メインのストーリーは、首相爆殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡劇である。
第一部「事件のはじまり」、第二部「事件の視聴者」を読んでいると、青柳雅春という奴は本当に犯人で、悪い奴だと思い込まされる。これが実は普段われわれがマスコミを通して知る“事実”なのだ。
第三部の「事件から二十年後」というルポで「おや?」と思い始め、本書のメインである第四部「事件」に入り、リアルタイムで事件について語られ、青柳の逃亡劇を読み進むうち、彼の実像と“本当のこと”が分かる構成になっている。
とにかく、逃げる!逃げる!青柳、そして彼を直接的に間接的に助ける仲間たち。
とりわけページを割いて登場するかつての恋人樋口晴子の活躍は印象的だ。
そして、伏線と過去のカットバックが効果的に取り入れられていたり、人を喰ったような意外性もあったりして、行間からは“伊坂エッセンス”が溢れている。
本書は、「現時点での伊坂小説の集大成」と呼ぶにふさわしい大作で、伊坂ファンも
そうでない人も、きっと時を忘れて読み進んでしまう、そんなリーダビリティーを持った一冊である。