今日読み終えた本

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)

本書は、元NHKワシントン支局長としてTVにも登場した手嶋龍一による、わが国初のインテリジェンス小説として、’06年にベストセラーとなった。
主人公は在日英国情報部員スティーブンである。彼の元へ「新種の偽百ドル札(“ウルトラ・ダラー”)がアイルランドのダブリンにあらわれた」という情報が入るところから物語は始まる。
この北朝鮮製とみられる“ウルトラ・ダラー”の謎解きを軸に、拉致問題、ハイテク企業の陥穽、外交官の暗闘など、あらゆる問題を巻き込んで、それこそ世界を股に駆けた北朝鮮をめぐる物語が展開されるのだ。
「なにをもってインテリジェンス小説というのか」という疑問を持って読み始めたが、
どうやら今のわが国が抱えている政治・外交・諜報の諸問題の情報を十分に精査
・分析して書かれた近未来・問題提起小説のようである。であれば手嶋龍一のような経歴と交友関係を持った人が情報を収集しなければこのような小説は書けないであろう。
本書は、問題が多岐に渡りすぎてポイントがつかみ辛かったり、登場人物が多すぎたりと、物語小説としては未熟の部分があるが、上述のようなインテリジェンス小説という観点からすれば、その目的は充分達成した作品といえるだろう。