今日読み終えた本

路上の事件 (扶桑社ミステリー)

路上の事件 (扶桑社ミステリー)

’07年、「このミステリーがすごい!」海外編第6位にランクインした、作者ジョー・ゴアズの自伝的な要素も盛り込まれた名品である。
主人公は作家を夢見る21才の青年ダンク。彼は大学を卒業後、故郷のミネソタを後に放浪の旅に出る。1953年の夏、ジョージア州のある町で有蓋貨物列車から飛び降りるところから物語は始まる。彼は保安官に捕まり、道路建設の重労働刑を課せられ、収容所送りとなる。そこを脱走した彼は、メキシコでバカ騒ぎをやらかし、ラスヴェガスロートルのヘビー級ボクサーの介添え役となり、ロサンゼルスで建設人夫をやりながらある新興宗教に関与する。そしてサンフランシスコに移って私立探偵事務所に職を得るのである。
8部に渡るエピソードのうち、前半の4部が上述のエピソードが綴られたロード・ノベルであり、後半の4部がハードボイルドな探偵小説という構成になっている。
しかしこの物語の特長は、終末の締めくくりに至って、前半の4部、とりわけラスヴェガスの部分が見事な伏線として生きてくるところにある。
本書は、この1年間のさまざまな事件を通して、さらに恋愛も結婚も経験し、そして
自身の命と命よりも大切なものを賭したダンクの、ひとりの青年の成長物語として
読み応えがある。時代背景が古く、オールデイズファンには応えられないだろうが、
そうでない世代にも抵抗無く読める、新しい鮮やかな小説の登場に喝采を送りたい。