今日読み終えた本
- 作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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ストーリーは歴史作家グラットンが、サイン会で初対面の女性から、手記を渡される
ところからはじまる。それは彼が次回作のために調査していて、チャーチルが回顧録の中で指摘したある矛盾を解決するはずのものであり、雑誌で情報の提供を呼びかけていたものだった。それが冒頭の第1部。
ここから第2部と、第3、4部を挟んで第5部のふたつの部で一卵性双生児のふたりによるパラレルワール・歴史改変ストーリーが展開されるのである。
ベルリンオリンピック、第二次世界大戦、チャーチルの思惑、ルドルフ・ヘスの独英単独講和の画策など知的好奇心をくすぐるテーマながら、正直、歴史が分岐してゆく過程を読み解くのはなかなか難しかった。読み終わった今でも物語の正誤性がつかずに
いる。
プリーストは、SF、ミステリーにおける技巧を縦横無尽に駆使して、同じイニシャルを
持ち、歴史の流れに翻弄される一卵性双生児、ジャックとジョーの人生を、虚実入り
乱れた「語り=騙り」で描ききっているのだ。
本書は、知的水準の非常に高いSFミステリー・エンターテイメントであるといえよう。