今日読み終えた本

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第4位、「このミステリーがすごい!」海外編第15位にランクインした、英国SF協会賞、アーサー・C・クラーク賞受賞作。
ストーリーは歴史作家グラットンが、サイン会で初対面の女性から、手記を渡される
ところからはじまる。それは彼が次回作のために調査していて、チャーチル回顧録の中で指摘したある矛盾を解決するはずのものであり、雑誌で情報の提供を呼びかけていたものだった。それが冒頭の第1部。
ここから第2部と、第3、4部を挟んで第5部のふたつの部で一卵性双生児のふたりによるパラレルワール・歴史改変ストーリーが展開されるのである。
ベルリンオリンピック第二次世界大戦チャーチルの思惑、ルドルフ・ヘスの独英単独講和の画策など知的好奇心をくすぐるテーマながら、正直、歴史が分岐してゆく過程を読み解くのはなかなか難しかった。読み終わった今でも物語の正誤性がつかずに
いる。
プリーストは、SF、ミステリーにおける技巧を縦横無尽に駆使して、同じイニシャルを
持ち、歴史の流れに翻弄される一卵性双生児、ジャックとジョーの人生を、虚実入り
乱れた「語り=騙り」で描ききっているのだ。
本書は、知的水準の非常に高いSFミステリー・エンターテイメントであるといえよう。