今日読み終えた本

天使の鬱屈 (講談社文庫)

天使の鬱屈 (講談社文庫)

英国におけるミステリーの頂点、CWA(英国推理作家協会)賞の’01年度エリス
・ピーターズ・ヒストリカル・アワード(最優秀歴史ミステリー賞)受賞作。
物語の語り手は70才の坂が近づいたウェンディ。
2000年を目前にした彼女が1958年ごろを回想する形をとっている。夫の不倫を
目撃したことがきっかけで別居した彼女は、大聖堂のある町ロシントンで学生時代の親友宅に居候することになる。そこで、大聖堂図書館の蔵書目録を作る仕事を始めるのだが、やがて、半世紀前の聖職者にして詩人のユールグリーヴの存在を知る。彼は「醜聞の主」として職を追われるのだが、一方で「立派な紳士」との評判も聞く。興味を持ったウェンディは自分なりに調査を始める。しかし同じように彼のことを調べている
もうひとりの謎の人物がいた・・・。
本書は、誰でも知っている歴史上の人物や出来事にスポットを当てた、重厚でドラマ
チックな歴史ミステリーではないが、いくつかの小事件や、ウェンディが身を寄せる一家に起こる悲劇的な事件とあわせて、回想物語らしく、粛々とストーリーは進んでゆき、事件や謎もその流れに乗って結末を迎える。
比較的短い章立てと、各章末の終わり方の手際に、次章へ結びつくミステリーらしい
スリルがあって、文庫にして548ページにおよぶ長編だったが、とても読み易かった。