今日読み終えた本

さよなら、そしてこんにちは

さよなら、そしてこんにちは

萩原浩の小説を読むと、いつも笑ってしまうのだが、その中に何か人生の悲哀のようなものを感じる。
本書は、テレビ番組の健康コーナーを日々チェックしながら仕入れに追われる、スーパーの食品売場責任者(「スーパーマンの憂鬱」)、若い妻と愛娘にクリスマス・パーティーをねだられる住職(「長福寺のメリークリスマス」)、など6編の短編からなっている。
主人公の、それぞれのプロフェッショナルな仕事を持つ人々や主婦はいずれも、世のため、人のため、愛する家族のため、そして自分のために一生懸命奮闘するのだが、思わぬことで翻弄されてしまう。
どの短編も題材に沿って綿密な取材がされており、やたらその道に詳しいが、それだけに、主人公たちに悲壮感が漂い、一層コミカルに描かれている気がする。
本書は、「萩原テイスト」あふれる、ユーモアと悲哀感を併せ持つ物語の集まりである。