今日読み終えた本

wakaba-mark2008-04-04

骸の爪

骸の爪

第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作『背の眼』の続編に当たる作品。
前作に続いて、ホラー作家の道尾、探偵役の「真備霊現象探求所」の真備(まきび)とその助手北見が登場する。
今回の舞台は滋賀県の南端の山間にある仏像工房「瑞祥房(ずいしょうぼう)」。
ストーリーは、取材に訪れた道尾がまたしても不可思議な現象に遭遇するところからはじまる。彼は夜中に何かをつぶやく男の声と、仏像たちが動き回る音を聞く。さらに口を開けて笑う千手観音と割れた頭から血を流す仏像も見たのである。彼の話を聞いた真備はさっそく北見と道尾を連れて「瑞祥房」へ赴く。
ひとり、またひとりと姿を消す工房の弟子たち、20年前に失踪したという仏師と工房主の妹、謎めいたことを言う車椅子の先代主、ミステリアスな雰囲気とホラー趣味は前作に引けをとらない。
しかし、やがて真備の推理は20年の歳月を越えて真相に到達する。振り返ってみれば本書は、登場人物たちの言動や表情、仏像たち、そして「瑞祥房」自体のそこかしこに見事な伏線が張り巡らされた本格ミステリーだった。
冒頭でホラー的要素を配し、結末に至ってすべてを合理的・論理的に解明してゆく
筆者・道尾秀介の手腕はさすがである。