今日読み終えた本

大統領特赦〈上〉 (新潮文庫)

大統領特赦〈上〉 (新潮文庫)

大統領特赦〈下〉 (新潮文庫)

大統領特赦〈下〉 (新潮文庫)

リーガル・スリラーのベストセラー作家ジョン・グリシャムが’05年に発表した国際謀略小説。しかし物語のメインストーリーは主人公バックマンの逃亡劇を中心としたサスペンスである。
CIAの陰謀によって、関係諸国を巻き込む偵察衛星をめぐるスキャンダルで禁固刑に処せられていたバックマンはある日突然、選挙で大敗を喫してホワイトハウスを去る
ことになった大統領の特赦でもって釈放される。彼は、別の名前をあたえられ、異国の地イタリアで厳重な監視の下、新生活を始める。
物語の中盤は、ボローニャでのバックマンのイタリア語習得のレッスン場面が延々と
つづき、それは北イタリアのアペニン山脈の麓に位置する風光明媚な学生の町ボローニャの観光小説の趣がある。
終盤、バックマンが一連のトラブルに自らけじめをつけるため、監視の目をかいくぐり
行動を開始するに至って、物語は急転回を見せる。
かつてスキャンダルに巻き込まれたイスラエルや中国といった国から放たれた刺客のプロフェッショナルたちが迫るなか、彼はCIAの意表をついて逆襲に転じるのである。
本書は、しびれるようなサスペンス小説というわけでもなくて、運命に弄ばれ、流転を重ねるバックマンの、思いもかけない人生を、緩急を交えて描いた作品であり、
グリシャムとしては異色作ということになるのだろう。