今日読み終えた本

ニューヨーク大聖堂(上) (講談社文庫)

ニューヨーク大聖堂(上) (講談社文庫)

ニューヨーク大聖堂(下) (講談社文庫)

ニューヨーク大聖堂(下) (講談社文庫)

ネルソン・デミルが’81年に発表した、文庫上・下巻で1089ページにも及ぶ大作
である。
時は1984年3月17日、223回目のアイルランド人の祝日「聖パトリックの日」に、
ニューヨークはマンハッタンにそびえ建つ聖パトリック大聖堂がIRA暫定派から分離した<フィアナ騎士団>と名乗る武装グループに、4人の要人が人質に取られて占拠された。彼らの要求は北アイルランドイングランドにある収容所に拘束されている137人を夜明けまでに釈放し大赦をあたえること。これが果たされない時は人質を殺し、
大聖堂を爆破すると。仕掛けられた爆薬の起爆時間は翌朝6時3分。猶予はおよそ
12時間。
ストーリーは、タイムリミットに向けて緊迫感を張りつめながら進行してゆく・・・。
聖堂の外では、プロの人質交渉人を表に立てながらも、州知事、市長、市警、CIA、FBI、国務省、イギリス外務省のメンバーたちがそれぞれの思惑で功を競い合い、
イギリス軍情報部の少佐が陰で暗躍する。
聖堂の内では、人質が脱出の機をうかがい、たてこもった<フィアナ騎士団>の体制が次第に明らかになっていく。
第5部「攻撃」に至って、たたみかけるような大聖堂での攻防戦が展開されるのだが、デミルは、主人公のニューヨーク市警情報部のバーク警部補を軸に、ほとんど分秒刻みで、きわめて冷静に、客観的・写実的・ドキュメンタリータッチにこの重大テロ事件を描いている。とてもフィクションとは思えないほど、およそ考えられる限りの情況が
ディテールまでしっかり構築されている。
ともあれ本書は、そのヴォリュームにもかかわらず、思わず一気に読みきってしまう、警察小説、謀略小説、恋愛小説などの要素をたっぷり放り込んだ第一級のサスペンスである。