今日読み終えた本

神の獲物 (講談社文庫)

神の獲物 (講談社文庫)

C・J・ボックスによる<ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット>シリーズ邦訳
第3弾。
仕事を愛し、家族を愛し、誰よりも正義感の強い等身大のヒーロー、ジョーが今回直面するのは「自分の力を超えた未知なる敵」だった。
娘たちと釣りに出かけたジョーは、奇妙なムースの死体を発見する。まるで外科手術のような鮮やかさで顔や性器が切り取られており、その周囲には人や獣の足跡は
なかった。
次は12頭もの家畜の牛が同様の手口で殺され、ついにその凶行はふたりの人間に
まで及ぶ。対策本部が設置され、「カルト教団」、「政府の新兵器実験」、「テロリスト」、「変質者」、「鳥」、果ては「エイリアン」説まで飛び交う始末。
ジョーは対策本部の一員ではあったが、殺人事件の捜査からははずされる。
しかし事件には合理的な説明がつくはずだと信じるジョーは、あえて禁を破り、無能な保安官事務所を敵にまわしながら、前作で登場した鷹匠の力を借りながら捜査に奔走する。
やがて見えて来たのは、静かな西部の小さな町にブームを巻き起こしているエネルギー開発問題との関連だった。ラストで意外な真犯人と実行犯が明らかになるのだが、本書では過去の作品のように正義を貫き、命がけで闘うジョーの姿は見られない。
むしろ本書は、オカルト風味を取り入れたスリラー・サスペンスであり、このシリーズにおけるC・J・ボックスの作品世界がさらに広がったと言えよう。