今日読み終えた本

ソー・ザップ! (角川文庫)

ソー・ザップ! (角川文庫)

『ダブルオー・バック』につづく、稲見一良(いなみいつら)の第2作。
ハードボイルド・ハンティング長編小説である。
’90年、「このミステリーがすごい!」国内編で第15位にランクインしている。
火の匂い、肉の焼ける匂い、ビールの匂いが漂い、飽満と倦怠のあたたかい空気が
満ちる「パブ・パピヨン」で、レッドと名乗る謎の男が、いずれも一癖ある4人の常連客に対して、自分の命に3千万円の賞金を賭けたハンティングの勝負にのらないかと
持ちかけてきた。挑戦を受けた男たちは、指定されたK山脈系の山野に分け入り、
文字通り“命を賭けた”マンハント・ゲームを始める。
さすがに稲見一良の趣味であり得意とする分野だけあり、本書には、銃器、狩猟や
野外活動に関する詳しく専門的な知識や情報が随所にリアルにちりばめられている。それらが、無駄な心理描写を極力排した独特の文体と、息詰まるアクションシーンの連続とあいまって、熾烈な男同士の闘いのドラマを描ききっている。
本書は読み始めたらやめられない緊迫感に満ちた、タフでハードな“男”の物語
である。