今日読み終えた本

交渉人 (幻冬舎文庫)

交渉人 (幻冬舎文庫)

’01年に『リカ』で「第2回ホラーサスペンス大賞」を受賞した五十嵐貴久の2作目の
長編。
夜遅く、コンビニに押し入った3人組の強盗が病院に逃げ込み、入院患者、医師、看護師ら50人を人質に立てこもるという事件が発生した。警視庁は500人体制で周囲を固め、犯人との交渉を特殊捜査班に要請する。ここで登場するのが、FBIで研修を受け、これまでにも輝かしい実績を残している人質解放交渉と犯人逮捕のエキスパート、石田警視正だ。彼は、犯人たちの言うことにはいっさい逆らわず、すべて聞き入れ、
愚痴や悩みさえ聞いていきながら、実は逆にコントロールするという高等技術を駆使
しながら、順調に交渉を進めてゆく。そして、事件の解決も間近と思われたあたりから急転直下、予想もしなかった真相へとなだれ込んでゆく。
思えば石田警視正の「交渉」自体が、すべて驚愕の真実への伏線であり、トリック
だったのである。
本書は、手に汗握る人質解放交渉プロセスの形をとっているが、警察内部の葛藤
あり、タイムリミットあり、叙述ミステリーの仕掛けと意外な真相、そしてある種の告発
小説の要素を含んだ感動の人間ドラマありと、面白要素がてんこ盛りの作品である。