今日読み終えた本

鎮魂歌は歌わない (文春文庫)

鎮魂歌は歌わない (文春文庫)

“復讐” をテーマとした、ハワイ人の血を半分ひく、ロノ・ウェイウェイオールのハード
ボイルドなデビュー作。
主人公の‘おれ’ことワイリーは、妻子と別居して以来、ポーカー賭博や麻薬密売人の恐喝などをして荒んだ生活をしていた。だが、ある日娘リジーが、モーテルで惨殺死体となって発見される。彼女は娼婦まがいの仕事をしていたようで、どうやら客に殺されたらしい。怒りと悲嘆で目覚めた‘おれ’は、娘を殺した犯人を見つけて、この手で落とし前をつけてやると決意する。ここからストーリーは、‘おれ’と犯人フェルナンドの視点が交互に重なって展開されてゆく。
‘おれ’は、裏社会に通じる旧友レオンや、刑事サムの協力をあおぎながら、徐々に
事態の核心に迫ってゆくが、やがて見えてきたのは、フェルナンドと、また彼と行動を共にする者たちが、想像を超えた巨大組織とつながっていることだった。
本書は全編にわたって、ごく短い章立てで、独特のキレのいいタフで非情な語り口で、なおかつブルージーな雰囲気を醸し出している。最近にないストレート勝負のハード
ボイルドの快作と言えるだろう。ただ人物が、何の紹介も無く次々といきなり登場して
くるので、面食らうと同時に冒頭の「主な登場人物一覧」を何度も見なければならない
のが少し面倒だった。