今日読み終えた本

ヒルダよ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ヒルダよ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

1950年に発表された、アンドリュウ・ガーヴの、今や古典的名作といってもいい作品。
舞台は11月のロンドン。ヒルダがガスオーヴンの中に頭を突っ込んで中毒死しているのが発見され、警察がやってくるところから物語は始まる。
最初は自殺と思われたが、遺体の状況から殺人であると断定される。そして、発見者である夫のジョージが、遺留指紋、若い女との浮気、あいまいなアリバイから容疑者
として逮捕される。
彼の無実を信じる親友マックスは、冤罪を晴らそうと真相究明に乗り出す。ストーリーは夫妻、とりわけ妻のヒルダの、現在・過去の関係者に聞き込みに回るマックスの
しろうと探偵調査が主軸となり進行していく。
関係者の話から浮かび上がってくるのは、ジョージのいう明るくて身持ちの堅い賢夫人イメージとは異なるヒルダの実像だった。いわく、「煮ても焼いても食えない女」、
「鼻持ちならない人」、「殺されても仕方がない」と、怪物的・ホラー的とさえ言えるほどのヒルダ像がこれでもかとばかり明らかになってくるのだ。
なぜヒルダは殺されたのか・・・。果たして真犯人は・・・。謎は深まるばかりである。
本書は、最後の最後まで息を抜けないタイムリミットのある心理サスペンスであり、
かつ悪女ミステリーの妙が堪能できる快作である。