読書記録12

堕ちた刃  上 (集英社文庫)

堕ちた刃 上 (集英社文庫)

堕ちた刃  下 (集英社文庫)

堕ちた刃 下 (集英社文庫)

’08年1月末に初来日した、元モデルで女優、ロマンチック・サスペンスの女王、
サンドラ・ブラウンの邦訳最新刊。’08年に女性としてはじめて<スリラー・マスター
・アワード>を受賞した作家にふさわしいスリリングな長編である。
グリフ・バーケットは、全米で人気絶頂のアメリカン・フットボールの花形クォーター
バックだったが、不法賭博と八百長試合の罪で5年間の服役を終え、刑務所から出所する。そんな“堕ちた”ヒーローに、思いがけないオファーが舞い込む。大富豪で航空
会社の社長スピークマンから、破格の報酬で「車椅子生活の私に代わって、再婚した若い妻を妊娠させてくれ」それも、人工授精などではなく通常の性行為で。
グリフとスピークマンの妻ローラとの不自然な“情事”が始まる。
一方、グリフはロダートという男に、組織暴力団の手下で八百長試合の胴元だった
男の未解決の殺人事件の犯人と目され、執拗につけまわされていた。そればかりか、グリフのなじみの高級娼婦が暴行を受け、グリフ自身にも暴力が降りかかる。それでも彼はスピークマン夫妻とのこの奇妙な契約の秘密を守らないといけない。
これだけでも意表をつくサスペンスフルなストーリーだが、やがてローラは妊娠し、
そしてスピークマン自身が殺害されるという事件が起こる。容疑者となったグリフは、追い詰められながらも身の潔白を証明するために、いつしか愛し合うようになった
ローラとともに、事件の証人であるスピークマンの介護人の行方を求めて、そして
本当の、意外な身分を持つロダートと最後の決死の対決するのだった。
本書は、スピード感あふれる展開、巧妙に伏せられながらも少しずつ明らかになる
事実。そしてロマンチック・サスペンスの女王の作品にふさわしいクライマックスと
エンディングなど、一気に読ませる要素が詰まったエンターテインメントである。