読書記録13

陰謀病棟 (扶桑社ミステリー)

陰謀病棟 (扶桑社ミステリー)

’02年、ドイツでサスペンス部門では著名なフリードリヒ・グラウザー賞新人賞を受賞した、クリストフ・シュピーベルクの小説デビュー作。
主人公の‘ぼく’フェリックスは45才。ベルリンの、元は大学付属病院で、今は経営面から有限会社化しているフマナ病院に8年来勤務している循環器科の医師である。
ストーリーは以前‘ぼく’が担当していた入院患者のウクライナ人病院清掃員がひどい黄疸で救急車によって運び込まれるところから始まる。彼はすでに死亡していた。当時は怪我で入院しており、肝臓に異常は無かったのに・・・。‘ぼく’は不審を抱き、「死因不明、要解剖」と死亡診断書に記載して検死にまわすが、診断書は「自然死」に書き
換えられ遺体は火葬されてしまった。
“頑固でしつこいとこらならだれにも引けはとらない”フェリックスは恋人のツェリーネと共に真相究明に乗り出す。しかし冷徹に病院の経費節減計画を進める事務長ブレドウの突然の死、その愛人の殴打事件、‘ぼく’自身も家や車を荒らされる、などの脅迫
ともいえる危機が迫る。
ウクライナ人患者は、ラベルを貼り直した東欧からの安価な輸入保存用血液からC型肝炎に感染して死亡したのではないか。そしてひどく派手に操作した会計の帳簿を
残して死んだ事務長。病院内部の会計でおこなわれていたマネーロンダリング疑惑。
いくつもの謎をはらみながら物語は真の黒幕が明らかになるクライマックスへと突き
進んでゆく。
本書は、結末のあっけなさと、全体に少し軽い感じは否めないものの、現役医師作家の手によるものだけに、現代の病院が医療面、経営面で抱える問題などをからませた臨場感あふれるサスペンス・ミステリーである。