読書記録20

Story Seller (新潮文庫)

Story Seller (新潮文庫)

伊坂幸太郎近藤史恵道尾秀介本多孝好ら当代気鋭の7人の作品が集まった
アンソロジー
伊坂幸太郎の「首折り男の周辺」・・異なる3つのエピソードがひとつにまとまる、ひねりのきいた伊坂ワールドが味わえる作品。
近藤史恵の「プロトンの中の孤独」・・名作『サクリファイス』につながる一編。
有川浩の「ストーリー・セラー」・・本作品集の中で私が最も心を動かされた秀作。
妻がかつて症例のない重病に罹った夫婦のヒストリーを感動的に描いている。
米澤穂信の「玉野五十鈴の誉れ」・・今からかなり時代の古い、旧家の跡継ぎに
生まれた女性の、使用人との心のふれあいを切々と描いた儚ささえ感じられる一編。
佐藤友哉の「333のテッペン」・・東京タワーの塔頂部で起きた不可解な連続殺人が
テーマのミステリー。主人公の‘オレ’も何気に怪しくて、冒頭から物語に引き込まれてしまった。
道尾秀介の「光の箱」・・同窓会に参加した男の少年時代のほろ苦い恋愛の思い出と、その相手の女性を、ノスタルジックに描き、さらに読者に時間差攻撃を仕掛けて
いる小説。
本多孝好の「ここじゃない場所」・・同級生の男子にテレポーテーションの超能力が・・?
その秘密を探る‘私’の危なっかしい冒険譚。
本書収録の作品は、いずれも短編というより中編といったボリュームで、しかも
これだけの人気作家たちがそろっているとなれば、読まずにはいられない。
そして一気に読み切ってしまうほどの力作ばかりである。