読書記録21

告白

告白

’07年、短編「聖職者」で「第29回小説推理新人賞」を受賞し、その作品を第一章
として連作化した本書は、湊かなえのデビュー作ながら、堂々’08年、「週刊文春
ミステリーベスト10」国内部門第1位、「このミステリーがすごい!」国内編第4位に
輝いた。
また昨晩発表された「2009年第6回本屋大賞」の大賞にも選ばれた、まさに話題
独占のミステリーである。
第一章から第六章までモノローグ形式で‘級友’‘犯人’‘犯人の家族’などから
それぞれ語らせ、連鎖的にあらたな悲劇を引き起こし、次第にじわりじわりと波紋が
広がり、真相が浮き彫りになってゆく形をとっている。
ミステリーとしては、第一章で、幼い我が子を校内で亡くした女性中学校教師が、
終業式のホームルームで、実はそれは事故ではなく殺人であり、犯人である少年たちを指し示し、復讐を企てたところからはじまり、第六章でふたたびその教師の語りから驚愕のラストシーンが待ち受けており、途中の章の伏線も効いていて完成度は高い。
一方で、実際の事件や人物を仮名で取り上げながら、昨今話題の社会性の高い
少年犯罪と犯罪被害者の問題を多視点でとらえている点、そしてそれぞれの章で
独白する者たちの常識からはずれた「ゆがみ」「いびつ」の点では「現代の抱える
病巣」を鋭く突いているように思われる。
本書は、エンターテインメントの衣をかぶった衝撃・戦慄の社会派ホラー・サスペンス
ではないだろうか。