読書記録22

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

全世界で800万部以上を売り上げたという、スウェーデン発驚異の三部作の第一部。この第一部は、スカンジナヴィア推理作家協会が北欧5カ国で書かれたミステリー
最優秀作に与える「ガラスの鍵」賞を受賞している。
大物実業家の暴露記事を書いて、名誉毀損で有罪となったジャーナリストのブルムク
ヴィストは、ある老富豪ヘンリックから奇妙な依頼を受ける。36年前に失踪して、
殺されたかもしれない兄の孫娘の事件を解明して欲しいというのだ。スウェーデン
中部の島を訪れた彼は、ヘンリックからの条件を受け入れ、調査を始める。
上巻は、三部作にも及ぶ大部の物語の冒頭となるだけに、おびただしい老富豪一族の歴史や、ブルムクヴィストともうひとりの主人公であるリスベットのそれぞれの
エピソードなどがいささか冗長に進行してゆくが、下巻に入り、ブルムクヴィストと
リスベットが出会うあたりから、一気にページターナーの様相を呈してくる。
そもそも、「事故により閉ざされ、大きな密室と化した孤島からの人物消失」「死者からの贈り物」「暗号解読」「1949年からの過去の謎の連続殺人」「見立て殺人」「富豪
一族の歴史と闇と確執」「主人公の危機」「驚愕のサイコパス」と、謎解きミステリーと
サスペンスの素材がてんこ盛りなのである。
彼らは、過去の資料を舐めるように洗い直し、些細な証拠から手がかりを見つけ、
足を使って調査するというオーソドックスな捜査と併行して、最新のコンピュータ技術
をも用いて真相に肉薄してゆく。
さらに、この物語は、なるほど著者ラーソンが雑誌ジャーナリズムの出身だけあって、ブルムクヴィストの声を借りて金儲け至上主義者を糾弾し、現代スウェーデンの翳の部分を指摘する社会派小説でもある。また愛と復讐の物語でもあり、狂気と血に
まみれた歴史悲劇小説としての側面も持っている。
ともあれ本書は、あらゆる要素を盛りこんだエンターテインメントであり、その壮大な
スケールは、第二部、第三部と進んでゆくことにより、読者の前に現れるのだろう。