読書記録28

サクリファイス

サクリファイス

’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第5位、「このミステリーがすごい!」国内編第7位にランクインし、’08年度「第5回本屋大賞」でも伊坂幸太郎
ゴールデンスランバー』に次いで第2位になった近藤史恵の書き下ろしベストセラー小説。
主人公の‘ぼく’こと白石誓(しらいしちか)は、プロの自転車ロードレースクラブ
「チーム・オッジ」の若手レーサーだ。前半、彼が語る自転車ロードレースの世界は
専門用語が飛び交い、あまり馴染みのない世界だが、それでも「ツール・ド・ジャポン」レースを通して、チームの<エース>とそれを勝たせるべく走る<アシスト>という
ものがあることなど、特殊な競技の本質や、チーム内の複雑な関係の理解が深まると同時に、興味を持って読み進むことができる。
そして、後半、ベルギーの国際大会のレース中に惨劇が起こる。終盤、物語は一気に加速して結末のドラマは二転三転する。真相に至るまでの結末の展開はサスペンス
フルであり、さすがはミステリーランキングの上位にランクインしただけの作品である。
大作が多い中、全体のボリュームも程よい長さで、文章にも疾走感があって、まさに
自転車ロードレースさながらで臨場感たっぷり。本書は、青春スポーツ・サスペンスの逸品である。