読書記録47

ハヤカワ・ポケット・ミステリでは5冊目となる、オットー・ペンズラー編による’06年版の短編集。ゲスト・エディターにスコット・トゥローを迎え、ジェフリー・ディーヴァー
エルモア・レナード、そして惜しくも逝去したエド・マクベインの最後の作品など、常連、重鎮、若手作家などが名を連ねる、本アンソロジー向けに書き下ろされた12編を含む21編のラインナップである。
「生まれついての悪人」ジェフリー・ディーヴァー:長年会わなかった娘が母親を訪ねてくるのだが、その直前の母親の視点で綴られる想い出と、娘が登場してから明らかになる“真実”が、さすがはディーヴァーらしい見事などんでん返しとなっている。本作品集のうちで一番の傑作。
「即興」エド・マクベイン:「さて、今夜のちょっとしたお愉しみに何をしようか?」バーで
ウィルがナンパした女からは「誰かを殺すっていうのはどう?」という答えが返ってくる。意表をつく導入部から、彼らを待つ意外な結末まで一気に読ませる、これぞ短編の
醍醐味といってもいい作品。
「探偵人生」ウォルター・モズリイ:マギルは“まとも”でない私立探偵だ。ニューヨークの裏社会ともつながりを持つ“汚れた”マギルを待ち受けていた運命とは・・・。華やかな大都会の<陰>を生きのびてゆく男の人生を、エピソードを交えて描いた一編。
この分野におけるアメリカと日本の短編の評価のギャップだろうか、他の作品にも
それなりに面白いものはあったが、読んでいていまひとつ乗れなかった。
ともあれ、本アンソロジーは現代アメリカ・ミステリが凝縮された一冊なのだろう。