読書記録49

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

’72年2月から翌年9月にかけて早川書房から<世界ミステリ全集>全18巻が刊行された。本書はその最終18巻目『37の短篇』から、今日ではまず他でお目にかかることの出来ないであろう14編をチョイスした短編集である。
いくつか挙げてみると・・・
「死刑前夜」ブレッド・ハリデイ:死刑囚の語る顛末には最後に大きなオチがあった。
「殺し屋」ジョルジュ・シムノン:ご存知メグレ警部ものの、ひとひねりある逸品。
「エメラルド色の空」エリック・アンブラー:スパイ小説の巨匠が挑んだ本格ミステリ
「天外消失」クレイトン・ロースン:奇術師探偵マーリニーが、独特の、そして得意な
手法で人間消失の謎を解く表題作。
「この手で人を殺してから」アーサー・ウイリアムズ:倒叙スタイルのクライムストーリーの傑作。
「ラヴデイ氏の短い休暇」イーヴリン・ウォー:最後の一文でぞっとさせるサイコ
スリラー。
「探偵作家は天国へ行ける」C・B・ギルフォード:一度死んだ男が真相を探るために
しばし現世に戻るというユニークな発想の一編。
「女か虎か」フランク・R・ストックトン:結末を読者にゆだねるというあまりにも有名な
異色作。
このほかにも、ターザンが探偵役をつとめる類人猿ものや、火星人探偵が密室トリックを暴くSFミステリなどジャンルの隙間に嵌ってしまった作品をはじめ、本格もの、パルプフィクションものなど、本書は30数年の時を経て復活した、マニア垂涎の短編集
である。