読書記録53

wakaba-mark2009-08-27

真夜中の死線 (創元推理文庫)

真夜中の死線 (創元推理文庫)

’00年、「このミステリーがすごい!」海外編第16位にランクインしたデッド・リミット
・ストーリー。また、原題の『TRUE CRIME(トゥルー・クライム)』というタイトルで
クリント・イーストウッド製作・監督・主演により映画化もされた。
舞台はアメリカ中部のミズーリ州セントルイス
時はうだるほど暑い7月17日、月曜日。死刑執行まであと24時間、正確に言えば、物語の開始から17時間と40分。この間に、地方新聞の記者エヴェレットが死刑囚の冤罪を晴らし、執行を阻止しようと孤軍奮闘するストーリーである。
彼は事故で瀕死の重傷を負った同僚の代わりに、死刑囚に直前インタビューをする
ことになるのだが、下調べの段階で不審な点が浮上してくる。ここから彼の奔走が
始まる。
本書は、エヴェレットが事の顛末を後に発表した小説の体裁をとっているのが特長的である。これにより、エヴェレットの視点で描かれる一人称の、浮気を繰り返すが
なんとも魅力的で人間臭い私生活の“軽さ”。そう、このキャラクター設定こそが、本書をして既存の同類の作品と隔てている大きなポイントだろう。そして、それに対応するかのように三人称で語られる執行前の「死刑囚監視室」に入れられた死刑囚やその妻、牧師、刑務所長らのディテールに富んだ描写が“重み”を持って生きている。
ページが進むに連れて両方の緊迫感と臨場感がいやが応でも増してゆくのである。
さらに結末部分では、エヴェレットがただの“くそったれ”ではないことがスピーディーに展開される。
本書は、一人称の“軽み”と三人称の“重み”が絶妙に対応した、ストレートな、そして出色のサスペンスである。