読書記録63

全世界で1500万部のベストセラーとなった、ケン・フォレットの大巨編。なにしろ本書は文庫にして上・中・下巻1800ページにもなる上に、続編の『大聖堂−果てしなき
世界』の文庫上・中・下巻も合わせるとなんと合計4000ページになんなんとする
ボリュームを誇っている。なお本書『大聖堂』は’92年、「このミステリーがすごい!
海外編第15位にランクインしている。
物語は1120年のエピグラフ、1123年のプロローグ、そして本編は1135年から
1174年までと、まさに12世紀のイングランドを舞台にした壮大なものである。
いつかこの手で大聖堂を建てたい−というトムの夢は、キングスブリッジでかなうことに。そしてトムから継子のジャックへとその夢は引き継がれる。この大聖堂建築という大事業を軸に、当時の複雑な、正当なる王位継承をめぐっての戦乱や、王権対教会の権威といったものを歴史的背景にしながらも、実際この物語は、人々の野望と
貪欲、欲望と怨恨と復讐のありさまをいかんなく綴ってゆく。
二転三転するストーリー展開にハラハラしながらも、命の危険が現代よりも遥かに
高かった時代の、幾多の逆境に堪えて、それでも目的を達成させようとする登場人物たちの波乱万丈の生きかたからは、勇気をもらえるし、力強い命の息吹が感じられる。
さすがは数々のスパイ小説で名を馳せたケン・フォレットだけに、この長い長い小説
でも読ませどころは充分心得ており、読んでいるうちに知らない間に自然とページが
進んでいるという体験を味わうことができた。本書は、ともかく物語の面白さというものを再認識させる「夢中巨編」である。続編『大聖堂−果てしなき世界』への期待が
いやがうえにも高まる。