読書記録67

わらの女 【新版】 (創元推理文庫)

わらの女 【新版】 (創元推理文庫)

何度もドラマ化されたり、映画にもなったりした、カトリーヌ・アルレーの’56年発表の
ミステリー史上に燦然と名を残している作品である。
戦争で家族や親類縁者を失って天涯孤独な34才のドイツ人女性ヒルデガルテは、
新聞の求縁広告に莫大な資産家で自分にぴったりの条件の相手を見つける。
早速応募する彼女だったが、実際はその広告は本人ではなく、その秘書が出したものだった。ふたりは綿密な計画の下、首尾よくこの気難しい老人の心をつかみ結婚することに成功する。ところが思いがけない事態となり、ヒルデガルテは危機に陥る。
頼みとなるのはくだんの秘書のアントン・コルフひとりだけなのだが・・・。
テンポのよいスピーデーィーなストーリー展開、男と女の欲望と打算に満ちた
サスペンスフルな計略、どんでん返しといってもいいほどの予想外の悲劇をともなう
結末。本書はこれら三拍子そろったミステリーの、いまやクラシックの域に達した作品である。
欲を言えば、もっとヒルデガルテを徹底的な悪女に設定して、憎らしいほどドラマチックなサスペンスであっても良かったと思う。