読書記録68

ビューティ・キラー1 獲物 (ヴィレッジブックス F ケ 3-1)

ビューティ・キラー1 獲物 (ヴィレッジブックス F ケ 3-1)

チェルシー・ケインの小説デビュー作にあたる本書は、各国でベストセラーになった
という、心理サスペンスである。
舞台はアメリカ北西部オレゴン州ポートランド。市警刑事のアーチーは、女子高生を
誘拐し、レイプしたあげく絞殺するという“放課後の絞殺魔”の被害者3人目と
思われる失踪事件が起こって、特別捜査班を率いることになる。
実は彼は2年前、数え切れないほどの殺人を犯した美貌の連続殺人鬼“ビューティ
・キラー”グレッチェンに監禁され、十日間にわたる激しい拷問の末、
なぜかグレッチェン自身によって解放されるというおぞましい過去があった。
レッチェンはその際捕まるのだが、獄中の彼女に彼が毎週面会に来ることを条件に、自分が殺してまだ未発見の遺体がある場所を教えるということをしていた。
いまなお“ビューティ・キラー”の毒牙にかかったまま、彼は後遺症と闘うために大量の鎮痛剤に依存し、愛する妻や子供たちとも別居していたのだった。
そんなアーチーに密着取材をして彼の特集記事を連載することとなるのが、もうひとりの主人公、髪をピンクに染めた『オレゴン・ヘラルド』新聞の女性記者スーザンである。アーチーは、普通に考えれば迷惑なだけのマスコミの取材を許可するのだった。
果たしてアーチーは、そんな状態で“放課後の絞殺魔”事件を解決できるのか・・・。
物語はアーチーたち警察の捜査を軸に、スーザンとアーチー、グレッチェンの3人の
複雑な関係が絡んで展開される。
本書は、およそありえないシチュエーションを、巧みな人物造形とストーリーテリングで生み出し、描ききった通俗猟奇スリラーである。