読書記録69

ビューティ・キラー2 犠牲 (ヴィレッジブックス)

ビューティ・キラー2 犠牲 (ヴィレッジブックス)

『獲物』につづく<ビューティ・キラー>シリーズの第2弾。
前作“放課後の絞殺魔”事件から半年が経ち、ポートランド市警の刑事アーチーは、
新たな女性死体遺棄事件に取り組む。
一方、『オレゴン・ヘラルド』新聞の記者スーザンは以前から追っていた上院議員
スキャンダル事件に没頭していたが、当の議員が彼女の先輩記者と一緒に
自動車事故で死亡してしまう。やがて、アーチーの捜査する事件とスーザンの議員のネタには関連があるらしいと分かる。
ここまでは、前作から比べて通俗色が抜けた本格サスペンスの趣だったが、
“ビューティ・キラー”ことグレッチェンは、アーチーを放ってはおかなかった。彼女は
刑務所内で暴行を受け、そのため他の刑務所へ移る護送途中、同乗の保安官代理
ふたりを殺して逃走する。彼女はアーチーに接触を図り、彼は自らの命をかけて
レッチェンと凄絶な闘いをすることになるのだ。
物語の後半は、アーチーとグレッチェンの、またしても悪夢のようなやりとりが
繰り返される。そしてそこからは、戦慄とか壮絶を通り越して、甘美ささえ感じられる。美貌の連続殺人鬼と、彼女を追い続ける刑事、ふたりの間には、常人には
理解しがたい常識を超えた独特の絆が結ばれてしまっていたのだ。
冒頭の事件は、物語の最後にあっけなく解決を見るのだが、アーチーとグレッチェンの関には続編への期待と余韻を残して終わる。
ともあれ、個性ある脇役たちを配しながらも、短い章立てとたたみかけるような
スリリングな展開でテンポよく進む本書は、主役ふたりの、これでもかと言わんばかりの“非常識な関係”をテーマとした通俗サスペンスである。