読書記録7

警官の血 上 (新潮文庫)

警官の血 上 (新潮文庫)

警官の血 下 (新潮文庫)

警官の血 下 (新潮文庫)

’07年、「このミステリーがすごい!」国内編第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」
国内部門第3位に輝いた、佐々木譲の親子三代に渡る大河警察小説。
戦後間もない東京であっさり警察官に採用された初代安城清二。彼はふたつの
未解決事件、つまり昭和23年、上野公園の不忍池で殺された若い男娼の事件と、
28年の谷中のまだ少年の国鉄職員殺人事件に何か共通するものを感じ、独自に
調査をしていた。しかし、32年、自らが勤務する駐在所に隣接する天王寺五重塔が炎上した夜、持ち場を離れて跨線橋から転落し、轢死した。
清二が謎の死をとげるまでの第一部から、その息子である民雄もまた警察官となる
ものの、公安部から北大の過激派グループへの潜入を命じられ、赤軍派による
大菩薩峠事件にかかわった後、精神を病んで、父と同じ駐在所勤務となり、父の死の真相に肉薄しながら殉職する第二部、そして民雄の息子の和也もまた、安城家で
三代目の警察官となる第三部へと続く。
それぞれの部では、一家三代それぞれの読み応え充分の独立した数々の事件
・エピソードも語られるが、縦軸となるのは清二の死の謎と、彼が追いかけたふたつの未解決事件なのである。三代60年の歳月をかけて、和也が辿りついた祖父と父の死に隠されていた衝撃的な事情とは・・・。
本書は、初代の死をめぐる事件が作品を貫いているが、清二、民雄、和也が
命じられた任務の遂行は、世相をたどった戦後史であり、時代ごとに変化を遂げて
いった警察史であり、世間を騒然とさせた重大事件をあつかう犯罪史であり、
かつ安城一家三代の家族史である。
本書で私は、単にスケールの大きな大河小説にとどまらない「警官の血」を受け継ぐ
ということの矜持と、リアルに描写されたその時代時代を生きた彼らの警察官人生に思いを馳せた。