読書記録14

最も遠い銀河〈上〉

最も遠い銀河〈上〉

最も遠い銀河〈下〉

最も遠い銀河〈下〉

幻冬舎創立15周年特別書き下ろし作品」として上梓された、原稿用紙2510枚にも及ぶ白川道の大長編。
1996年10月、小樽の漁師が女性の変死体を引き揚げるところから物語は始まる。死体の身元はようとして判明しなかったが、その首にはテッポウユリのネックレスが
かかっていたところからストーリーは広がりをみせる。
愛する人との間に悲しい過去を持ち、ふたりの夢をかなえ、彼女の献身に報いる
ため、手段を選ばずどん底の生活から一歩一歩成功への階段を這い上がる新進気鋭の建築家・桐生晴之。一方、事件からかなりの歳月が流れており、しかも引退した身
であるにもかかわらず、ガンに冒されながらも執念の捜査で真相を追い求める小樽署の元刑事・渡誠一郎。両者の行動をメインに据えて、この長い小説は進んでゆく。
両方の視点と行動が重複するため、読者はすでに知っている同じ事実がダブって
語られ、まだるっこしいところはあるものの、桐生の“純愛”と渡の“けじめ”には
読むものに深い感動を与える。
本書は、物語のそこここに白川道の読者を「泣かせよう」と意図された読みどころが
満載で、その根底にあるのは“偶然”、“運命”、“宿命”であり、小説を読んで
「泣きたい」人にはこれ以上ない作品で、そのスケールと胸を打つものは’01年の
『天国への階段』を質・量ともにしのぐといっていい、落涙必至の感動大作である。