読書記録21

ロスト・シンボル 上

ロスト・シンボル 上

ロスト・シンボル 下

ロスト・シンボル 下

待ちに待ったダン・ブラウンの新作、<ラングドン>シリーズの第3弾である。
ラングドンは、フリーメイソンの最高位階にある恩師ピーター・ソロモンの名を騙る何者かによって、講演会の講師依頼と偽ってワシントンDCにおびき出される。
そこに待ち受けていたのは連邦議会議事堂の<ロタンダ>で、切断されたソロモンの、刺青がほどこされた右手首だった。「“古の神秘”へと至る門」を解き放てという謎の男の脅迫と、なぜかそこに駆けつけたCIA保安局局長サトウの依頼で、彼は難解なフリーメイソンの暗号解読に挑むことに。一方ピーターの妹で「純粋知性科学」研究者キャサリンのもとにもその命と研究成果を狙う魔の手が迫る。
すべてをもくろむ全身刺青の男マラーク。果たしてその正体と目的は・・・。
一種の暗号解読ミステリーといってもいい本書は前2作と比べても展開が速い。僅か半日程度の物語の中に、限られた登場人物たち。そして何度も訪れるタイムリミット。ひとつの謎が解き明かされると次の謎があらわれたり、ラングトンとキャサリンが危機一髪の目にあったり、そして10年前の事件と、謎の男マラークの驚愕の正体。
さながらノンストップ・ジェットコースター・サスペンスの様相を呈している。
また歴史上の事実と現実の儀式、科学、芸術と、実在の記念建造物とさまざまな組織とフィクションとを巧みに織り交ぜながらダン・ブラウンお得意の薀蓄が随所に見られ、読者は知的好奇心を刺激されながらページを捲ってゆくことになる。
本書は、一見地味な印象を受けるアメリカの首都ワシントンDCの“古の歴史”を
再発見させてくれるばかりでなく、秘密結社のように言われるフリーメイソンの謎の奥を解き明かしてくれる。そして終始、迷宮のように張りめぐらされた謎また謎に
満ち溢れた、一気読み必至のページ・ターナー・エンターテインメントである。