読書記録30

死せるものすべてに〈上〉 (講談社文庫)

死せるものすべてに〈上〉 (講談社文庫)

死せるものすべてに〈下〉 (講談社文庫)

死せるものすべてに〈下〉 (講談社文庫)

PWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)が主催するシェイマス賞の’00年度最優秀新人賞を受賞した、ジョン・コナリーのデビュー作。
深夜、いつもの酩酊状態で帰宅した‘わたし’ことニューヨーク市警のパーカー刑事は、むごたらしく拷問を受け、生きたまま顔の皮をはがされ、眼球を抉り出されて殺された愛妻と3才の愛娘を発見する。すわ、はやりのサイコ・サスペンスかと読み進んでゆくと、そんな要素もあるものの、場面は一転して私立探偵となった‘わたし’がある依頼を受けて失踪した女性を捜す物語となる。ストーリーはこの2本立てで進行してゆくのだが、やがて妻子殺しの犯人が聖書やルネサンス期の人体解剖図を模して犯行を繰り返す、サディスティックな連続殺人鬼であることがわかる。
ニューヨークでのギャングとの抗争、舞台をニューオーリンズに移して、またもや
ギャングとの抗争と、迫真のアクションシーンには事欠かないが、いかんせん話が
断片的かつ複雑で、前後のつながりとかメインテーマがかすれがちで、少々読み
づらかった。
妻子殺しの連続殺人鬼の名前が判明するラスト近くまで、とにかく登場人物の大半が殺されてしまうという激しい小説である。
意外な真犯人という“どんでん返し”はあるものの、本書は、複雑な構成と
おびただしい死者の数、そしてそんな中を生き抜く‘わたし’の強烈で個性的な生き様を描いたハードボイルドである。