読書記録48

処刑前夜 (講談社文庫)

処刑前夜 (講談社文庫)

本書は、メアリー・ウィリス・ウォーカーの長編第2作であると共に、アメリカにおける
ミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’95年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作である。
舞台はアメリカ・テキサス州オースチン。ヒロインは42才で離婚歴3回、弁護士の卵
である24才の娘を持つ犯罪ライター、モリー・ケイツ。この道22年のキャリアを持つ
彼女は、最近、11年前に起こった連続殺人事件を一冊の本にまとめて上梓した
ばかりである。物語はその犯人であるルイ・ブロンク死刑囚の死刑執行一週間前
というシチュエーションで始まる。
モリーの元に脅迫状とも取れる奇妙な詩が送りつけられ、ルイが死刑を宣告された
事件である大富豪マクファーランド夫人の殺人の謎がにわかに浮上してくる。
そして当のチャーリー・マクファーランド本人からもこの事件をネタにしたものは書くなと言われていた。そんな時、チャーリーの新しい妻が、ルイとまったく同じ手口で
殺される。さらに11年前、ベビーシッターとしてマクファーランド邸に住み込んでいた
青年も殺害される。死刑囚監房に収監されているルイには手が出しようもないのに。
もしかしたら、ルイのマクファーランド夫人殺しは冤罪ではないか、その事件と新たな
2件の事件の真犯人は・・・、モリーは必死に調査を進めるが、それを何者かが妨害し、彼女の命までも狙う。ルイの死刑執行まで刻々と時間は過ぎてゆく。
果たしてモリーは彼を救うことができるのか・・・。
本書は、一種のタイムリミットものだが、女性としての弱みを垣間見せながらも
バイタリティーあふれるヒロインの粘り強い奮闘小説といっていいだろう。また本格的な謎解きの興味やサイコ・スリラーの側面もあり、604ページとボリュームも満点で、
読み応え充分のエドガー賞受賞作である。