読書記録51

警部補デリーロ (集英社文庫)

警部補デリーロ (集英社文庫)

アメリカの人気TVシリーズツイン・ピークス』や『X−ファイル』の脚本チームの一員
だったスコット・フロストの作家としての本格デビュー作。
訳出は人気翻訳家池田真紀子。
LA近郊の都市パサデナ市警の殺人課の課長で警部補の‘私’ことアレックス・デリーロは17才の高校生の娘を持つシングルマザー。折りしも全世界の注目を集める新年の一大行事ローズパレードとローズボールを控えて、娘レーシーがローズクイーン
コンテストで過激な急進的環境保護活動運動に出る。
多忙な仕事を最優先してきて母親として思春期の娘のことは何も知らず、心を通わせていないことに悩むのだが、事件は待ってくれない。殺人事件が発生したのだ。
やがてそれは、パサデナを震撼させる連続爆弾事件へと発展してゆく。そしてあろう
ことか娘がその犯人に誘拐されてしまう。
本書はデリーロの母親として改めて愛する娘を思う気持ちを横糸に、時限爆弾を自在に操る‘ガブリエル’と称する連続殺人鬼との闘いを縦糸にして、進んでゆく。
時限爆弾のタイムリミットという切迫感と、警察官として冷静に客観的に事件を分析
すべきだと分かっていても、娘を案じる母親としての‘私’の焦燥が物語にこれ以上
ないほどの緊迫感を与えている。
そういった意味では、デリーロの一人称叙述は本書のサスペンスを盛り上げるのに
非常に効果的で、本書を、スピード感とリーダビリティーに富んだ第一級の心理
スリラーに仕立て上げている。読者は、くどいくらいの心理描写に常にハラハラ
・ドキドキしながら一気読みをしてしまうこと必至である。