読書記録53

運命の書 上 (角川文庫)

運命の書 上 (角川文庫)

運命の書 下 (角川文庫)

運命の書 下 (角川文庫)

本国アメリカで、’06年9月に刊行されるや、いきなり≪ニューヨーク・タイムズ≫紙
や≪パブリッシャー・ウィークリー≫誌のベストセラーリストの1位に躍り出たという
ミステリー。
米国大統領暗殺を狙った弾丸に撃たれたひとりの次席補佐官。
しかし、8年後、死んだはずのその男を目撃した若き下級補佐官の‘ぼく’ことウェスは、調査を独自に開始する。その死は偽装されたものだったのか。だとしたら誰が
何のために・・・。当の事件で流れ弾に当たって顔の半分と心に傷痕をのこしたウェスは、友人の弁護士ロゴや元同僚のドレイドル、そしてゴシップ欄を担当する女性新聞記者リズベスとともに、クロスワード・パズルに隠された秘密の暗号などの手がかりを追い、自らの人生を一変させてしまった事件の真相に迫ってゆく。
何者かに盗聴器を仕掛けられたり、FBIの捜査官が執拗に追ってきたり、精神病院に収容されていた狙撃犯が脱走してひたひたと迫ってきたり、大統領をめぐって不穏な取引を謀る“ザ・スリー”とか“ザ・ローマン”といった存在が明らかになったりとか謎が謎を呼んで事態は錯綜する。事件の背景にはほんとうに秘密結社フリーメイソン
陰謀がひそんでいるのか。
ストーリーは、短い章立てで、ウェスによる一人称叙述と、三人称叙述の章が交互に配され複数の登場人物の動きを同時進行で追っていく。この手法は、上巻はさほどではなかったが、下巻に至って謎の解明が進行してゆき、意表をつく人物が関係する
怒涛のクライマックスに向かっては実に効果的で、さながらノンストップ・サスペンスの様相を展開する。
本書は、ダン・ブラウンを関連付ける宣伝がなされたが、フリーメイソンとそれに関る
薀蓄は、残念ながらさほど表面に出てこない。また、単行本発行からわずか1年と少しで、この時期に表紙もそれらしく変えて文庫化されたのも、ダン・ブラウン
『ロスト・シンボル』に便乗してのことと思われる。それでも本書がページ・ターナー
・エンターテインメントであることに変わりはない。