読書記録56

犯罪小説家 (ヴィレッジブックス)

犯罪小説家 (ヴィレッジブックス)

各賞にノミネートされ、デニス・ルヘインやリー・チャイルド、ブラッド・メルツァーらが
絶賛した、“次代のマイクル・クライトン”との呼び名も高いグレッグ・ハーウィッツの
8作目の作品。
犯罪小説家で、5冊の本を発表している38才の‘ぼく’ことドリュー・ダナーは、腹を
刺され、血まみれになって死んでいる元婚約者と一緒に、包丁を持ったまま意識を
失っているところを発見される。‘ぼく’は殺人罪で逮捕・起訴されるが、裁判で脳腫瘍の発作による心神喪失を理由に罪を免れる。4ヶ月ぶりに解放された‘ぼく’だったが、事件当時の記憶を失っており、かつどうしても自分が殺ったとは信じられなかった。
そこで執筆取材で得た知識や人脈、友人らの力を借りて真相を解明しようとする。
しかし間をおかず、何者かに自宅に侵入されて傷つけられたうえに、‘ぼく’にとって
不利な物的証拠がそろった、その手口も似通った第二の殺人事件が起こる。
誰が、何のために‘ぼく’をはめようとしているのか・・・。
ストーリーは、‘ぼく’の一人称叙述で比較的軽快なテンポで進んでゆく。重要容疑者が現れては消え、また現れては消えと、事件は闇の中。そして、‘ぼく’がようやく
辿りついた真実はあまりにも悲しいものだった。
本書は、この種のミステリーにありがちな悲壮感や暗さはほとんど感じさせず、ジョークを交えた知的なスマートさと、とびきりの独創性を備えている。妙にあかぬけていて、魅力的で、人間味あふれるサスペンスである。