読書記録64

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

本書は、単行本で発表時の’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で
第7位、「このミステリーがすごい!」国内編では第10位にランクインした注目の俊英
米澤穂信の新感覚ミステリー。ホリプロ創立50周年記念映画として、『インシテミル
・7日間のデス・ゲーム』と題して藤原竜也主演で、’10年10月に劇場公開される。
時給11万2千円という破格の条件に誘われて人里離れた山道の奥にある施設に
アルバイトに集った12人の男女(映画では10人という設定らしい)。施設の地下に
ある<暗鬼館>に腰を据えた彼らを待っていたのは、特殊な報酬を含めた謎めいた戦慄の殺人ゲームへの参加ルールだった。
現実離れした究極のクローズド・サークル、特殊なルールに縛られた記号的な
登場人物たち、彼らの間で巻き起こる連続殺人事件。ひとり、またひとりと減ってゆく
仲間たち。果たして誰が7日間を生き残り、さらに膨大な額のボーナスを
手にするのか・・・。
作品中に横溢する本格ミステリーへのオマージュとガジェット、そして仕掛け。決して
短い小説ではないが、一気に読ませる終始スリリングな展開、終盤に二転三転する
真相。
本書は、ミステリーのマニアならなお一層、そうでない人でも充分楽しめる、米澤穂信本格ミステリーに“淫した”傑作である。