読書記録65

’87年に『紐と十字架』で始まった、英国のミステリー作家イアン・ランキンによる
スコットランドエジンバラ警察の<リーバス警部>シリーズ16作目の邦訳最新刊である。このシリーズは、’97年度は『黒と青』で英国におけるミステリーの頂点、「CWA(英国推理作家協会)賞」ゴールド・ダガー賞(最優秀長編賞)を、’04年度は『甦る男』でアメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」ベスト
・ノヴェル(最優秀長編賞)を受賞しており、英米で認められた実力派警察小説
シリーズである。
’05年7月6・7日と、エジンバラでG8サミットが開催された。本書は、これに関連する諸行事やデモ、オリンピック誘致の成功、ロンドンのテロ、定番の音楽祭などの騒乱の、7月1日から9日までのリーバス警部の行動を追ったものである。定年退職間近の彼は、この騒がしい約1週間に、相変わらず上司にたてつきながらも、連続殺人や
政府高官の転落死、地元市会議員の殺害事件に、相棒のシボーン部長刑事と共に
取り組む。
読みどころは、たとえ停職処分になろうと何があろうと自分流を曲げない、地道な捜査に邁進するリーバスの姿であろう。G8に関係して集まってくる防衛産業の社長、
外交官、公安警察のトップ、そしてリーバスの生涯の宿敵・ギャングのボス、カファティらとかかわりが詳細に描かれながら、そして彼は、複雑に絡み合った糸をしだいに
よりあわせ、ついに意表をつく真相にたどりつく。
本書は、リーバスの目を通して活写される世紀の大行事と騒乱・大混乱と、
“はぐれもの”リーバスとの対比、さらに意外性のある謎解きの興趣をもりこんだ、
読み応え充分の大作である。次の17作目がこのシリーズの完結編であるとのこと。是非早く読みたいと思う。