読書記録66

甦る男―リーバス警部シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

甦る男―リーバス警部シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

イアン・ランキンによるスコットランドエジンバラ警察の<リーバス警部>シリーズ
第13作。アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」
’04年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作である。
桐野夏生の『OUT』もノミネートされ話題を呼んだが、受賞にはいたらなかった。
美術商殺しの捜査方針で上司の主任警視と対立し、紅茶の入ったマグを投げつけてしまったリーバスは、もう一度協調精神を学習するために、警察官再教育学校へ
送られる。そこにはリーバス同様勤務態度に問題のある警官が5人いた。彼らは課題として古い迷宮入り事件の協同再調査を与えられる。しかしそれは、当時リーバスも
捜査に深く関った悪夢のような事件だった。
一方、エジンバラに残ったシボーン・クラーク部長刑事は、新米のハインズ刑事と
くだんの美術商殺しの地道な捜査を続けていた。関係者を洗ううちに彼女がたどり
着いたのはリーバスの宿敵、エジンバラの陰の実力者、ギャングのボス、カファティ
だった。
ストーリーは、リーバスの警察官再教育学校の課題の事件捜査と、美術商殺しの
シボーンの捜査が交互に進行してゆくのだが、実はもうひとつ、リーバスがそこへ
送られたのは、闇の犯罪に手を染めたらしい疑惑の警官3人の尻尾をつかめという、警察本部長からの、潜入捜査という真の意図があったのだ。
数多くの、それぞれ一癖も二癖もある事件関係者が複雑に絡み合い、新たな
殺人事件や麻薬強奪事件など次々に意外な展開が続き、やがて最後の謎解きへと
疾走する。
本書は、登場人物たちが端役に至るまで個性豊かに描きこまれ、細かな伏線が
張りつめられ、サスペンスが仕掛けられ、それらが実に重層的なプロットとして
練り上げられた、ランキンならではの読み応えのある大作である。