読書記録67

紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)

紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)

現代英国ミステリー界を代表するイアン・ランキンによるスコットランドエジンバラ
警察の<リーバス警部>シリーズの記念すべき第1作。本書でリーバスは部長刑事
として初登場する。
光都市・スコットランドの旧都エジンバラで連続少女誘拐絞殺事件が起こっていた。大規模な捜査陣で事件にあたるが、手がかりはつかめない。リーバスもその一員
だったが、そんな彼の元に匿名の郵便物が真ん中に結び目のある短い紐が同封して複数回届く。ただの嫌がらせか・・・。やがて4人目の犠牲者が出るに及んでそれらが重要な意味を持っていることが判明する。
本書は、41才の、結婚に破綻したリーバスとその娘で12才のサミー、疎遠だった弟で麻薬がらみの悪事に手を染めているらしいマイケル、のちに上司となるジル
・テンプラーとの交際、そして何よりも、リーバス自身の陸軍特殊空挺部隊SAS)時代が丹念に描かれる。
後のシリーズ諸作品の重層的な展開とは異なり、ボリューム自体は短いが、リーバス個人に関ることがらが連続少女誘拐絞殺事件と結びついているのが特徴的である。
本書は第1作であるが、訳出が’05年と遅かったため、他の、先行して紹介された、
たとえば『黒と青』や『甦る男』などのCWA賞とMWA賞を獲得した代表作に見られる、
上司に反抗的で、孤独で、一匹狼的なリーバスの過去が明らかにされ、彼の原点を
垣間見たようで非常に興味深かった。