読書記録70

wakaba-mark2010-08-20

すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)

すべての美しい馬 (ハヤカワepi文庫)

現代アメリカ文学の巨匠コーマック・マッカーシーによる<国境三部作(ボーダー
・トリロジー)>の第1作。’92年の全米図書賞と全米批評家協会賞をダブル受賞している。また、マット・デイモンペネロペ・クルス共演により映画化もされている。
時は1949年、16才の少年ジョン・グレイディ・コールは、祖父が死んで牧場が人手に渡るのをきっかけに、新しい人生を選び取るため、親友ロリンズと共に、愛馬で
メキシコに越境した。途中で年下の少年プレヴィンスを道連れに加え、辿りついた
メキシコの大牧場で働き始めるのだった。そこでの仕事は順調で、彼は美しい牧場主の娘アレハンドラと恋におちる。
だが、彼を待ち受けていたのは予期せぬ運命だった。プレヴィンスが騎馬警官を
撃ち殺し、その共犯としてロリンズともども逮捕され、カステラル刑務所に収監されてしまう。そこで、ナイフを使った命がけの争いが起こる。くだんの牧場主の大叔母の尽力でふたりは自由の身になるのだが、彼女からアレハンドラとは二度と会うなといわれるジョン。
例によって、会話に引用符をつけず、心理・内面描写の無い、カンマを極力省略した
息の長い文章というマッカーシー特有のスタイル。加えて南部方言やスペイン語
とりいれた地方色あふれるダイアローグからは、会話が地の文と一体化して少年
ジョンの至高の恋と失恋、また苛烈な暴力が読者の胸をえぐる。
本書は、広大な西部を舞台にジョンの青春を鮮やかに謳いあげた、アメリカ青春小説の傑作である。