読書記録80

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

’77年発表、’80年創元SF文庫として邦訳され、現在に至るも版を重ね(ちなみに
私が読んだのは「BOOK OFF」で手に入れた’08年74版)、さらにAmazonの
レビュー数はこれを書いている時点で73を数え、そのうち63が☆5つという、まさに
現代ハードSFの記念碑的ベスト&ロングセラー。毎年行われる日本SF大会の参加者の投票によって選ばれる「星雲賞」を’81年第12回海外長編部門で受賞している。
時は2028年、月面で真紅の宇宙服を着込んだ死体が発見された。<チャーリー>
と名付けられたその死体は綿密な検査の結果、5万年前のものであることが分かり、ほとんど現代人と同じ生物で、はるかに進んだ科学技術を有していた。はたして
<チャーリー>とは何者なのか・・・。
やがて今度は木星の衛星ガニメデで地球のものではない巨大な宇宙船の残骸が
見つかる。その内部には人間とは似ても似つかない巨大な生物の死体が・・・。
さらに調べるとそれは約2500万年前のものであることが分かった。
前者「ルナリアン」と後者「ガニメアン」と、そしてわれわれ人類との関係は・・・。
国連宇宙軍を中心に、原子物理学者ハントと生物学者ダンチェッカーの分析と推論が始まるが、謎は謎を呼び、ひとつの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。
火星と木星の間に太古の昔存在した惑星「ミネルヴァ」。今は地球の惑星となっている月の歴史に関る大胆な仮説。進化論にもとづく人類と「ルナリアン」の由来。
本書は、「ガニメアン」の解明は続編の『ガニメデの優しい巨人』、『巨人たちの星』に
ゆだねられているが、謎解きの興趣に満ちた、SF(サイエンス・フィクション)であり、
一応は正統な理論にもとづいた「ルナリアン」と人類の関係が解き明かされる、その
過程をパズラーのように楽しむ、ミステリーファンの私でも充分に納得のゆく傑作
である。