読書記録91

ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス

ジェフリー・ディーヴァーの、<リンカーン・ライム>シリーズ第7弾『ウォッチメイカー』
(’06年)からスピンオフした、カリフォルニア州捜査局捜査官でキネシクスを駆使する尋問の天才“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスをヒロインに据えた『スリーピング
・ドール』(’07年)に次ぐ2作目。
今回は彼女がネットの世界が原因と見られる予告殺人に挑む。交通事故で同乗の
女子高生ふたりを死なせたとして有名ブログで取り上げられた高校生をバッシング
した者が次々に命を狙われる。ついには殺人まで・・・。ダンスは姿を消した彼をリアル世界とネットの両面から追う。
前作から数週間後の月曜日から金曜日までを追った物語だが、木曜日に、
“どんでん返し”で一応の決着を見る。あと60ページあまり金曜日が残っている。
さては、と思っているとそこには二重の“どんでん返し”が待っていた。
関係者たちの危機一髪シーンの連続。嘘を見破るダンスの分析と推理の妙。捜査に介入する者の圧力。前作との関係で逮捕されてしまうダンスの母親。そして随所に
張り巡らされた伏線とそれに伴う驚愕の結末。まさに圧巻で、一気読み必至である。
また、ダンスを含めて、彼女を取り巻くひとびとの、母娘、親子、夫婦、男女の愛情や絆を心情豊かに描いているところも本書の特長である。
本書は、誰もが関心を持つ、コンピューター社会・ネットの世界が孕む危機という
きわめて現代的なテーマを題材として、ここ最近の2、3作では見られなかった、
もともとディーヴァーの最大の持ち味である“どんでん返し”の醍醐味に満ちた、
リンカーン・ライム>シリーズとはひと味違う、ファン必読の逸品である。