読書記録102

グリーンリバー・ライジング (角川文庫)

グリーンリバー・ライジング (角川文庫)

’93年、「このミステリーがすごい!」海外編堂々第1位に輝いた、ミッチェル・スミスの『ストーン・シティ』に肉薄するプリズン・サスペンス。それが同じ翻訳家、東江一紀
(あがりえかずき)訳出による本書である。’95年、「このミステリーがすごい!」海外編で第13位にランクインしている。
舞台はテキサス州の架空のグリーンリバー刑務所。そこには窃盗や詐欺から強姦、
武装強盗、凶悪殺人にいたる2,500人の囚人が、収容されている。
なかにはホモセクシュアル、ソシオパス(社会病質者)、統合失調症など精神を病んだ者たちもいる。
そこはホッブス刑務所長の独自の独裁的な理論により統べられていた。
黒人、白人、ラテン系と一応棲み分けがされていたが、ある日白人のボス・アグリーが突如暴動を起こす。彼は手下を使い、黒人の囚人抹殺を謀る。
刑務所内診療所で病気や怪我の囚人の面倒を診ており、翌日仮釈放されるはず
だった元整形外科医で恋人レイプの罪で服役中のクラインは、この暴動に
巻き込まれるが、アグリーが診療所内の黒人エイズ患者を皆殺しにする企みを知り、そこに閉じ込められた人々を救出するため、闘いを決意する。
次々に襲いかかる囚人たちや難題を相手にしたクラインの死闘が、そして診療所内で、侵入しようとする敵に立ち向かう女性精神医学者デヴリンたちの応戦は、過剰な
までの暴力と性の描写の連続で、本書の最大の読みどころである。
とにかく、“濃い”。テーマが、プロットが、囚人一人ひとりが、看守が、医師が、そして
刑務所長が。本書は、読み出したらとまらない、狂気と灼熱に満ち満ちた、黙示録的
刑務所バトル小説である。