読書記録1

ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話

ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話

ミステリーのアンソロジーを編纂することにかけては第一人者のオットー・ペンズラーが、ジェフリー・ディーヴァーマイクル・コナリーといった21人の実力派ミステリー作家による、自らの作品のメイン・キャラクターの誕生や人となり、小説作法の紹介などの、舞台裏の秘話を集めた。
原題が『The Lineup』という本書は、アメリカにおけるミステリーの最高峰、’10年度、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」の、ペンズラー自身2度目となる最優秀評論
・評伝賞を受賞した。
作家によって、エッセイあり、短編小説仕立てあり、架空のインタビュー仕立てありと、実にバラエティー豊かな21編である。
マイクル・コナリーのハリー・ボッシュが、当初の予定ではピアスという名前であったり、ジェフリー・ディーヴァーの一編がいきなりリンカーン・ライムの死亡記事で始まって
度肝を抜かれたり、コリン・デクスターのモース警部の名前の由来にいちいち
頷いたり、ロバート・B・パーカーのスペンサーの個性が3人の会話のなかから浮かび上がる仕組みに感嘆したり、イアン・ランキンリーバス警部をひっさげてブレイクするまでの道程を知ったりと、貴重な読書体験を味わうことができた。
所収の21の作家や彼らが生み出したメイン・キャラクターの中には私を含めて日本の読者には馴染みのない人たちも多々いたが、周知のキャラクターの意外な一面を発見したり、未知の作家のガイダンスになったりと、税込み2,835円というやや高額な
ハードカバーに見合うだけ充分楽しめる価値がある本であった。ただ惜しむらくは、
邦訳に訳出の際、作家紹介のページの既刊作品において、XX出版社YY年発行というように、これから日本で購入して読める情報を併記してもらうと尚良かったと思う。