読書記録17

ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)

ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)

15人もの作家たちと、それぞれ7人もの翻訳家が各章を受け持つ、“リレー小説”
という企画ミステリー。リードするのはジェフリー・ディーヴァー。彼自身、冒頭の1章と
しめくくりの2章という重要なパートを受け持っている。
モチーフは’10年が生誕200年にあたったショパン、その手書きの楽譜『手稿譜』。
アメリカの音楽史の教授で元陸軍情報大佐のミドルトンは、ポーランド南部クラフクの空港でワシントンDCに帰国しようとしているところを国家警察に連行される。
ワルシャワピアノ調律師が拷問の末殺害されたのだ。ミドルトンは彼から未発表のショパンの手稿譜を託され、鑑定することになっていた。こうして幕を開ける物語は、
さながらこの手稿譜の争奪戦の様相を呈して、章ごとに参加した作家たちがバトンを引き継いで、素早い場面転換を繰り返しながら、ミドルトンとくだんの調律師の周り
キャラクターたちや、FBI捜査官、殺し屋、テロリストが次々に登場し、入り乱れては、スピーディーに展開してゆく。
果たして手原譜に秘められた謎・パワーとは・・・。
そして事件は解決したかに見える終盤の、ディーヴァーお約束の“どんでん返し”。
本書は、ジェフリー・ディーヴァーの巧みな手綱さばきによる15人もの作家と7人もの翻訳家の見事な連携と結束で、まったく破綻なく楽しめる痛快な冒険・音楽ミステリーである。