読書記録18

蘇えるスナイパー (上) (扶桑社ミステリー)

蘇えるスナイパー (上) (扶桑社ミステリー)

蘇るスナイパー (下) (扶桑社ミステリー)

蘇るスナイパー (下) (扶桑社ミステリー)

野崎六助の「解説」には、ボブ・リー・スワガーのシリーズ「第6作」とあるが、私は
あえてボブの父親アールの物語も含めて、本書を<ボブ・リー・スワガー&アール
・スワガー>劇場第10弾と呼ばせてもらう。
元ヴェトナム反戦活動家4人が立て続けに射殺。その、遥か遠距離からの狙撃は
正確無比。FBIは、元海兵隊員でヴェトナム戦争時の名スナイパーで、今は重大な
精神疾患を抱えた67才の男を容疑者と断定するが、彼もまた自殺と思われる状態で
発見される。
正確すぎる射撃、揃いすぎた証拠に疑問を抱いた捜査指揮官はボブに調査を依頼
する。ここに大企業のオーナーで富豪の男を黒幕とする、コンピューター内蔵の最新鋭ハイテク・照準器<iSniper>を擁する、アイルランドの傭兵狙撃チームとボブとの、
手に汗握る、命を賭けた壮絶な闘いが始まる。
本書の読みどころは何といって還暦を過ぎてなお、強靭な精神力、持久力、そして
誰にも負けないスナイパーとしての銃の腕前を誇るボブの孤高の闘いであろうが、
物語にリーダビリティーと疾走感とをもたらしている作者ハンターの、事典と見紛う
ばかりの、マニアックなまでの銃器への陶酔ぶりも見逃せない。
前々作『四十七人目の男』(’07年、訳出は’08年)前作『黄昏の狙撃手』(’08年、
訳出は’09年)は少し物足りなさを感じたが、本書は、シリーズ第1作の『極大射程』(’93年、訳出は’98年・’99年「このミステリーがすごい!」海外編第1位)の原点に還ったかのような、ファンも納得する、一大ガンアクション・エンターテインメント巨編
である。